これまで、このブログでは「ChatGPTのAPIをカスタマイズしてチャットボットを作成」する方法や、「Flask入門:Pythonで簡単Webアプリ開発に挑戦!]」といったテーマで、私自身の学習過程を記録してきました。
ChatGPT APIでAIの応答をコントロールする方法を学び、FlaskでWebアプリの基本的な作り方を覚えました。ということで、この二つを組み合わせて、Web上で動くオリジナルのAIチャットボットを作ることに挑戦しようと思います!
- FlaskプロジェクトでOpenAIライブラリを使うための環境設定
- Webフォームからの入力をChatGPT APIに渡す具体的な方法
- ChatGPTからの応答をWebページに表示する流れ
- 簡単な会話履歴を保持する仕組み(Flaskの
session
利用) - APIキーの安全な管理方法 (
.env
ファイル) - 開発中に遭遇しやすいエラーとその対処法(体験談ベース)
今回も、専門家による完璧な解説というよりは、私自身が試行錯誤した道のりを共有するスタイルでお届けします。FlaskとAIの連携に興味がある方の、最初の一歩の後押しになれば嬉しいです!
最終的に以下のアプリを作りました!

環境構築と準備: Webチャットボット開発の第一歩

まずは、開発環境を整えるところからスタートです。Webアプリを作るためのFlaskと、ChatGPT APIを使うためのOpenAIライブラリが必要になります。そして、大事なAPIキーの管理方法もここで押さえておきましょう。
- 必要なPythonライブラリ (
Flask
,openai
,python-dotenv
) をインストール。 - OpenAI APIキーを取得(まだの方はOpenAIのサイトで取得してください)。
- APIキーを安全に管理するため、プロジェクトルートに
.env
ファイルを作成し、そこにキーを記述。 - 基本的なFlaskプロジェクトのフォルダ構成を作成 (
app.py
,templates/
,.env
)。
ライブラリのインストール
まずは開発環境を整えることから始めました。以前の記事で使ったcondaを活用して、クリーンな環境を用意します。
# 新しい仮想環境を作成
conda create -n flask-chatbot python
conda activate flask-chatbot
# 必要なパッケージをインストール(今回はpipを使用)
pip install flask openai python-dotenv
python-dotenv
は、.env
ファイルに書かれた環境変数をプログラム内から簡単に読み込めるようにするためのライブラリです。これが非常に便利なので、ぜひ利用しましょう!

APIキーの安全な管理 (.env
ファイル)
絶対にやってはいけないのが、APIキーを直接Pythonコード (app.py
など) に書き込むことです! もしコードをGitHubなどで公開したら、APIキーが世界中に漏洩してしまいます。
そこで、プロジェクトのルートディレクトリ(app.py
と同じ場所)に .env
という名前のファイルを作成し、以下のように記述します。
# ご自身のAPIキーに置き換えてください
OPENAI_API_KEY=sk-◯◯◯
# Flaskのsession機能で使う秘密鍵。後述します。適当な文字列でOK。
FLASK_SECRET_KEY=your_very_secret_flask_key
具体的な手順としては以下のとおりです。
1. .gitignore
ファイルを作成する
プロジェクトのルートディレクトリ(app.py
と同じ場所)に .gitignore
という名前のファイルを作ります。
2. .gitignore
に .env
を追加する.gitignore
に次の1行を書きます。
.env
この設定をすることで、.env
ファイルは Git に無視されリポジトリに追加されなくなります。
プロジェクト構成
最後にプロジェクトの構成を考えます。以前のFlask入門で学んだように、適切なファイル構成がWebアプリ開発では重要になります。今回は以下のような構成にしました。

- APIキーの扱い
- 最初は「まあローカルだし」とコードに直接書こうかと思いましたが、将来的に公開する可能性を考えると、最初から
.env
を使う習慣をつけるのが大事だと感じました。(うっかりAPIキーを公開してしまうと、悪用された場合大変なことに…) python-dotenv
のおかげで、思ったより簡単に扱えました。
- 最初は「まあローカルだし」とコードに直接書こうかと思いましたが、将来的に公開する可能性を考えると、最初から
.gitignore
の重要性- うっかり
.env
をコミットしないように、最初に.gitignore
に.env
を追加することが重要だと感じました。
- うっかり
FlaskアプリケーションとChatGPT APIの統合(app.py)

環境が整ったので、いよいよFlaskアプリの骨格と、ChatGPT APIとの連携部分を作っていきます。Flaskアプリケーションのベースとなるコードをapp.py
に書いていきます。
from flask import Flask, render_template, request, jsonify, session
from openai import OpenAI
import os
from dotenv import load_dotenv
import secrets
# 環境変数のロード
load_dotenv()
# Flaskアプリケーションの初期化
app = Flask(__name__)
# sessionを使うためにSECRET_KEYを設定 (環境変数から読み込む)
app.secret_key = os.getenv('FLASK_SECRET_KEY')
# OpenAI APIクライアントの初期化
client = OpenAI(api_key=os.getenv("OPENAI_API_KEY"))
@app.route('/')
def index():
# 新しいセッションの場合、チャット履歴を初期化
if 'chat_history' not in session:
session['chat_history'] = [
{"role": "system", "content": "あなたは親切なAIアシスタントです。簡潔で役立つ回答をしてください。"}
]
return render_template('index.html')
@app.route('/chat', methods=['POST'])
def chat():
data = request.json
user_message = data.get('message', '')
# セッションからチャット履歴を取得
chat_history = session.get('chat_history', [
{"role": "system", "content": "あなたは親切なAIアシスタントです。簡潔で役立つ回答をしてください。"}
])
# ユーザーのメッセージをチャット履歴に追加
chat_history.append({"role": "user", "content": user_message})
try:
# ChatGPT APIを呼び出し
response = client.chat.completions.create(
model="gpt-3.5-turbo",
messages=chat_history,
temperature=0.7,
max_tokens=500
)
# APIからの応答をチャット履歴に追加
assistant_message = response.choices[0].message.content
chat_history.append({"role": "assistant", "content": assistant_message})
# セッションにチャット履歴を保存
session['chat_history'] = chat_history
return jsonify({"response": assistant_message})
except Exception as e:
return jsonify({"error": str(e)}), 500
if __name__ == '__main__':
app.run(debug=True)
- チャットの処理(@
app.route('/chat', methods=['POST'])
)/chat
にPOSTリクエストが送られたときに実行される関数request.json
でクライアントから送られたJSONデータを取得data.get('message', '')
でユーザーのメッセージを取得
- Flaskのsessionを活用:
- Flaskの組み込みセッション機能(
session
)を使うことで、クッキーベースのセッション管理が簡単に実装できました。 - これによりユーザーごとに別々の会話履歴を保持できます。
- Flaskの組み込みセッション機能(
- エラーハンドリング
- APIリクエストは時折失敗することがあるので、try-except文でエラーをキャッチしています。
- OpenAIクライアントの初期化
- 以前はOpenAIのライブラリの使い方が少し違いましたが、最新バージョンでは上記の
client=
のように初期化する方法になっているようでした。 - 古い書き方でも動きますが、できれば推奨されている最新の書き方が良いですね。
- 以前はOpenAIのライブラリの使い方が少し違いましたが、最新バージョンでは上記の
チャットの処理(jsonの送受信)とFlaskのsession
以外は、以前の記事で学んだ内容なので細かくは解説していません。気になる方は下記の記事をご確認ください。


チャットインターフェースのフロントエンド開発(HTML,CSS,JavaScript)

Pythonを使ってバックエンド部分の作成が出来たため、次にユーザーがチャットボットと会話するためのフロントエンドを作ります。まずは基本的なHTMLテンプレートから始めます。
※長くなってしまうため、フロントエンドのコード解説は最低限にします。フロントエンドの話は、また別の記事で詳しくできればと思います。
JavaScriptとの連携は以下の記事でまとめていますので、そちらを御覧ください。

<!-- templates/layout.html -->
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>Flask ChatGPT ボット</title>
<link rel="stylesheet" href="{{ url_for('static', filename='css/style.css') }}">
<meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
</head>
<body>
{% block content %}{% endblock %}
<script src="{{ url_for('static', filename='js/chat.js') }}"></script>
</body>
</html>
<!-- templates/index.html -->
{% extends "layout.html" %}
{% block content %}
<div class="chat-container">
<div class="chat-header">
<h1>FlaskとChatGPT APIで作るWebチャットボット</h1>
</div>
<div class="chat-messages" id="chat-messages">
<div class="message bot-message">
<div class="message-content">こんにちは!何か質問がありますか?</div>
</div>
</div>
<div class="chat-input-container">
<input type="text" id="user-input" placeholder="メッセージを入力...">
<button id="send-button">送信</button>
</div>
</div>
{% endblock %}
layout.html
は 共通のレイアウト を定義index.html
は チャット画面 を作成extends
でlayout.html
を継承し、block content
で上書き- チャットのデザインには
static/css/style.css
、動作にはstatic/js/chat.js
が関与
次に、CSSを用いてチャット画面の見た目を整えます。
/* static/css/style.css */
* {
box-sizing: border-box;
margin: 0;
padding: 0;
}
body {
font-family: 'Helvetica Neue', Arial, sans-serif;
background-color: #f5f5f5;
height: 100vh;
display: flex;
justify-content: center;
align-items: center;
}
.chat-container {
width: 100%;
max-width: 800px;
height: 90vh;
background-color: white;
border-radius: 10px;
overflow: hidden;
box-shadow: 0 0 10px rgba(0, 0, 0, 0.1);
display: flex;
flex-direction: column;
}
.chat-header {
background-color: #4285f4;
color: white;
padding: 15px;
text-align: center;
}
.chat-messages {
flex: 1;
overflow-y: auto;
padding: 20px;
}
.message {
margin-bottom: 15px;
display: flex;
}
.user-message {
justify-content: flex-end;
}
.bot-message {
justify-content: flex-start;
}
.message-content {
max-width: 70%;
padding: 10px 15px;
border-radius: 18px;
font-size: 16px;
line-height: 1.4;
}
.user-message .message-content {
background-color: #e3f2fd;
color: #0d47a1;
}
.bot-message .message-content {
background-color: #f1f1f1;
color: #333;
}
.chat-input-container {
display: flex;
padding: 15px;
border-top: 1px solid #eee;
}
#user-input {
flex: 1;
padding: 12px;
border: 1px solid #ddd;
border-radius: 20px;
font-size: 16px;
outline: none;
}
#send-button {
margin-left: 10px;
padding: 0 20px;
background-color: #4285f4;
color: white;
border: none;
border-radius: 20px;
cursor: pointer;
font-size: 16px;
}
#send-button:hover {
background-color: #3367d6;
}
チャットボットの見た目を整える役割
- 中央配置 & レスポンシブ対応
- ユーザーとボットのメッセージを色分け
- 入力欄とボタンをスッキリデザイン
- 吹き出し風のデザインで見やすく
最後に、JavaScriptを使ってユーザーの入力を受け取り、それをAPIに送る処理を作ります。Flaskのセッション機能を使っているので、ユーザー側でセッションIDを管理する必要はありません。
// static/js/chat.js
document.addEventListener('DOMContentLoaded', function() {
const chatMessages = document.getElementById('chat-messages');
const userInput = document.getElementById('user-input');
const sendButton = document.getElementById('send-button');
function addMessage(content, isUser) {
const messageDiv = document.createElement('div');
messageDiv.classList.add('message');
messageDiv.classList.add(isUser ? 'user-message' : 'bot-message');
const messageContent = document.createElement('div');
messageContent.classList.add('message-content');
messageContent.textContent = content;
messageDiv.appendChild(messageContent);
chatMessages.appendChild(messageDiv);
// スクロールを最下部に自動調整
chatMessages.scrollTop = chatMessages.scrollHeight;
}
function sendMessage() {
const message = userInput.value.trim();
if (message === '') return;
// ユーザーのメッセージを表示
addMessage(message, true);
userInput.value = '';
// ボットの応答中を示す表示
const loadingDiv = document.createElement('div');
loadingDiv.classList.add('message', 'bot-message');
const loadingContent = document.createElement('div');
loadingContent.classList.add('message-content');
loadingContent.textContent = '考え中...';
loadingDiv.appendChild(loadingContent);
chatMessages.appendChild(loadingDiv);
chatMessages.scrollTop = chatMessages.scrollHeight;
// APIリクエストを送信
fetch('/chat', {
method: 'POST',
headers: {
'Content-Type': 'application/json',
},
body: JSON.stringify({
message: message
}),
})
.then(response => response.json())
.then(data => {
// ローディング表示を削除
chatMessages.removeChild(loadingDiv);
if (data.error) {
addMessage('エラーが発生しました: ' + data.error, false);
} else {
addMessage(data.response, false);
}
})
.catch(error => {
// ローディング表示を削除
chatMessages.removeChild(loadingDiv);
addMessage('ネットワークエラーが発生しました。', false);
console.error('Error:', error);
});
}
// 送信ボタンのクリックイベント
sendButton.addEventListener('click', sendMessage);
// Enterキーでも送信可能に
userInput.addEventListener('keypress', function(e) {
if (e.key === 'Enter') {
sendMessage();
}
});
});
Webチャットボットのフロントエンド処理 を担当するコード
DOMContentLoaded
イベントでスクリプトを実行- メッセージを追加する関数 (
addMessage
) を定義 - ユーザーの入力を取得し、API へリクエスト (
fetch
) - 「考え中…」の表示を入れ、ボットの返答を受け取る
- 送信ボタンのクリック・Enterキーで送信できるように設定
- エラーハンドリングでネットワークトラブルにも対応
これで、ChatGPT APIを使ったチャットボットが完成しました!実行すると、以下のようにちゃんとやり取りをすることが出来ました!ちゃんと履歴も保存されてますね!(2回目の質問で、しっかりPythonについての答えが返ってきている)

今回のコードで特に工夫した点は以下のとおりです。
- ユーザーがメッセージを送っている間に「考え中…」と表示されるようにして、現在の状態を分かるようにしました。
- もしAPIがうまく動かないときにも、ちゃんとエラーメッセージを表示して、何が起きたのかを伝えるようにしています。
- Flaskのセッションを使うことで、クライアント側のコードが簡単になり、セキュリティも強化されました。
チャットボットのカスタマイズと機能拡張

チャットボットのカスタマイズ(AIの性格や専門性、temperature)
基本的なチャットボットができたので、次はシステムメッセージを変更してチャットボットの性格や専門性をカスタマイズしてみました。
まずは、プログラミング専門のアシスタントにしてみます。app.py
の該当部分を書き換えましょう。
# app.pyのチャット履歴初期化部分を変更
@app.route('/')
def index():
# プログラミング専門のアシスタントとしてチャット履歴を初期化
session['chat_history'] = [
{"role": "system", "content": "あなたはプログラミングに詳しいアシスタントです。初心者に分かりやすく、具体的なコード例を交えて説明してください。"}
]
return render_template('index.html')
次に、チャットボットの回答の創造性や多様性を調整するために、temperatureパラメータを変更してみました。
# より創造的な回答を得るために温度を上げる
response = client.chat.completions.create(
model="gpt-3.5-turbo",
messages=chat_history,
temperature=0.9, # 0.7から0.9に変更
max_tokens=500
)
temperatureを0.9に上げると、確かに回答がより多様になりましたが、時には質問から少し脱線することもありました。逆に0.3に下げると事実に基づいた堅実な回答が増えたので、用途によって適切に調整する必要があると実感しました。
チャットボットの拡張機能(リセットボタン)
ユーザーが新しい会話を始めるための「会話リセット」ボタンも追加してみました。
# app.pyに追加
@app.route('/reset_chat', methods=['POST'])
def reset_chat():
# チャット履歴をリセット
session['chat_history'] = [
{"role": "system", "content": "あなたは親切なAIアシスタントです。簡潔で役立つ回答をしてください。"}
]
return jsonify({"status": "success"})
<!-- templates/index.htmlに追加 -->
<div class="chat-header">
<h1>FlaskとChatGPT APIで作るWebチャットボット</h1>
<button id="reset-button">会話をリセット</button>
</div>
// static/js/chat.jsに追加
const resetButton = document.getElementById('reset-button');
resetButton.addEventListener('click', function() {
// チャット履歴を消去
while (chatMessages.firstChild) {
chatMessages.removeChild(chatMessages.firstChild);
}
// 初期メッセージを表示
addMessage('こんにちは!新しい会話を始めましょう。何か質問がありますか?', false);
// サーバー側でも履歴をリセットするためのリクエスト
fetch('/reset_chat', {
method: 'POST',
headers: {
'Content-Type': 'application/json',
},
body: JSON.stringify({})
})
.then(response => response.json())
.then(data => {
if (data.error) {
console.error('Reset error:', data.error);
}
});
});

これで、会話を新しく始めたい場合にも対応できるようになりました。以下のように、リセット前後でしっかり会話の内容が変わりましたね。
今回のwebアプリはPCのクッキーを使って会話内容を保存しているため、会話のリセットがわかりにくかったので、これでかなり使いやすくなりました。
まとめ
今回は、これまでに学んだFlaskのWebアプリ開発とChatGPT APIの知識を組み合わせて、実際にWeb上で動作するAIチャットボットの構築に挑戦しました。
環境構築から始まり、Flaskでの画面作成、API連携、session
を使った履歴管理、そしてエラーハンドリングと、一通りの開発プロセスを経験することができました。もちろん、まだまだ改善点や挑戦したいことはたくさんありますが、「自分で考えたものがWebアプリとして形になり、AIと対話できる」というのは、非常に大きな達成感がありました!
技術を学ぶ一番の近道は、やっぱり実際に手を動かして何か作ってみることですね!皆さんもぜひ、自分だけのWebアプリ開発に挑戦してみてください!
私も、次は非同期処理やデータベース連携など、さらにステップアップした機能実装に挑戦してみようと思います。その様子もまたブログで共有しますので、お楽しみに!